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ウェディングフィルムと小津安二郎2018.01.25

映画でも記録ビデオでも撮って出しでも同じですが、やはり人間を描ききれないと、共感や共有を得ることは難しいと思います。 小津安二郎監督は「映画はドラマであり、アクシデントではない」と言っています。 結婚式も、日々繰り返される日常の中の、一つのシーンとして捉え、日常の生活の繰り返される反復の積み重ねの一つの結果であり、通過点でもある。反復から生じるズレであると解釈されます。 小さな出来事の繰り返しである人生の中で、時折訪れる至福のとき、その一つの結果が結婚であり、突然ハリウッドのアクション映画のように非日常として出現したドキドキワクワクな事象ではないんですよね。 僕は、このような小津監督のコンセプトから「本来は価値のない、没個性的なものに対して、あえてそこで物語を 積み重ねることで価値を見出し、重みを持たせていく」というテーマを常に意識して撮影に当たっています。 結局、小津監督は日本ではあまり評価されず、没後に海外から再評価されて、世界中の監督に敬愛されています。 なぜならば、人種や文化や言葉、時代が違っても、彼の描いた日本の家族像が多くの人の共感を得たからなのです。 家族とか人生、人間の本質に迫っていたからこそ、共感されるということの証明だと思っています。 映像美に関して言えば、小津監督は徹底的にフレーミングに拘りました。 彼の画作りは、電動ズームのビデオカメラではなく、一眼デジタルカメラを使った撮って出しエンドロールの画作りにこそピッタリくると考えています。 機能や装飾をどんどん足していくのではなく、むしろそれらを極限までそぎ落としていく、いわば引き算の美学。 そこに人物をどう配置するかで、バランスと調和のとれた空間を導き出すという行為は、まさに禅や茶の湯の文化。 いくらスタイルが洋式になったとはいえ、我々日本人のDNAに刻み込まれている美学だからこそ、海外の真似ではない日本発の表現方法のほうが、日本人だけでなく全ての人に共感されうることができるんじゃないかと考えています。 以上のことから、僕は前々から日本の結婚式を表現するのに、小津作品を参考にしてきました。 これは僕が本質に近づくためのコンセプトを具体化する上のプロセスの一環ですので、その過程で得た技法や表現方法をOUNCEでシェアしていきたいと思っています。 皆さんと一緒に「オンスイズム」みたいな新しい表現方法を創造していけたらうれしいなと。 皆さんも個々に色々な表現方法の研究をやってほしいと思います。